おもちゃの試作品

製造業には欠かせない「試作」

企業が製品を製造し始める際、その工程で不可欠の作業がある。それは「試作」だ。図面に万が一、欠陥があった場合、そのまま最産すると不良品が大量発生し、取り返しのつかない事態になってしまう。図面そのものを頼りに最産を始めてしまうと失敗が発生しやすいのである。

このようなミスを防ぎ、確実に量産工程にシフトしていくためにも、試作品を作る工程は欠かせない。まずお客様の要望に基づき、図面を頼りに試作品をつくり、形状、機能や耐久性を高めるための材質も提案し、少しずつ調整を加えながら改良を行い、完全版を効果的に最産していくという流れである。「試作」は製造において、とても重要な役割を担っているのだ。

EMTOPIAは、試作工程でのサンプル作成を専門とする企業で、冷蔵庫、洗濯機・テレビ・携帯電話・炊飯器など家電製品の試作を主に請け負っている。

ヨリ速くヨリ正確にヨリ麗しく

EMTOPIAは日本本社の海外拠点という形で2006年に設立された。様々要求に応じる一貫生産体制として、EMTOPIAは製品の機能に合う外観、形状を設計し、又耐久性の高い材料等をお客様に提案する。モデリング、プログラム作成、機械加工、組立、表面塗装などの過程すべてを担い、きれいな外観で良質なスタイリングの試作品を提供している。

ダット氏は次のように語る。

「当社の武器はスピードです。他の会社は納期を守れないこともありますが、当社ならそれを提供できます。機械だけではなく人員も他社の3〜4倍はあるので、納期が早くても対応できる力があります」

実際、EMTOPIA は100名以上のエンジニアを雇い、FANUC の機械も30台以上保持しており、そのスピードと品質には定評がある。また顧客フォローもスピード、価格、質において対応できるサービス体制を整えている。

「サンプルだけ渡されて“こうしてくれませんか”と言われたら対応しますし、こちらからもアドバイスがあればお客さんに提供して、よりカになれるように心がけています」

同社の作業場には「ヨリ速くヨリ正確にヨリ麗しく」と書かれたポスターが掲げられており、その言葉はしっかりと実行されている。試作品専門の企業がまだ少ないベトナムにおいて、EMTOPIAは確固たる地位を築いているのだ。

最新設備の工場で働く優秀な社員たち

「楽しい職場」で社員を幸せに

「ウチは試作品なら何でも作りますよ、というスタンスですから」

社内に置いてある試作品を指差し、時おり関西弁で笑顔を見せるダット氏には、相手を自然と笑顔にさせてしまう不思議な魅力がある。2000年から10年間、大阪にあるEUTOPIA本社で働いた。

ダット氏はベトナムへ帰国した後、今のEMTOPIAに至る。

「今はほとんど日本より仕事を貰っています（約8割）。ベトナム国内にある得意先とも取引をしていますが（約2割）、最終的にはもっとベトナムからの仕事でやっていける環境に持っていきたいですね」

それを実現するため、ダット氏が独自に取り組んでいるのが「日本式の徹底」だ。社員が入社すると、まず「ありがとう」「ごめんなさい」を言えるよう教育し、掃除も行わせ、それらを「当たり前」として定着させる。朝礼では「おはようございます」「こんにちは」といった日本語のあいさつの練習もしている。

社員は「日本の会社」と分かったうえで入社しているので、躊躇することなくそれに順応していくという。日本での経験を活かし、それをベトナムの労側環境に対応させることも、同社の高品質を支える秘訣の一つであることは間違いなさそうだ。　

グエン・タット・ダット取締役　

インタビュー中、ダット氏は「楽しく」という言葉を何度も口にした。

「ウチの仕事は面白いですよ。一日一日やることが違って、ある日は洗濯機、ある日は車、ある日は冷蔵庫…。他にも、社員が自分で作りたいものを自由に設計・作成して遊べるようにしています。手のひらサイズの動物の像を作る社員もいます。好きなものを自分で作れるように、楽しく」

職場にいる時間のほうが長い社員を気遣い、会社を楽しい場にして幸せにしたいという。「試作は楽しい仕事」と自負するダット氏の思いは、着実にEMTOPIAの社風を良くしていることだろう。

「当面の事業目標は、ベトナム国内の仕事比率を上げていくこと、そして、良い品質の製品・サービスでお客様の満足度を常に高めることです。また、通常生活と仕事でも社員の幸せを求め、試作工程を楽しく」EMTOPIA の道は続いていく。