確かな技術で高品質を実現
「弊社は2012年より、山形にある本社の海外生産拠点としてベトナムに設立しました。設立当初から一貫して本社と連携し、お客様にワンストップの技術プロヂュース力を提供しています」
そう語るのは、EDVNの尾関誠ゼネラルディレクター。EDVN設立当初から支えてきた親のような存在だ。創業70年を超える山形の老舗企業がベトナムにやってきたきっかけは、国内で40年以上の取引があるベアリングメーカーがハイフォン市に拠点を構えたこと。EDVNはその一次サプライヤーとして2012年に進出した。「発展著しいベトナムの高い成長性と、若者の多さと勤勉さに可能性を感じました」と尾関氏は当時を振り返る。
金属部品が活躍する場所はさまざままで、我々の生活はそれらに囲まれていると言っていい。
EDVNが得意としているものの1つがリニアガイドだ。リニアガイドはメカトロニクス機器の高精度化・高速化・省力化など、機械性能を向上させた。最近では、液晶製造ライン・鉄道車両・福祉車両・医療用機器・高層ビルや住宅・アミューズメント機器などにも使用されている。
そのほかにもFA(ファクトリーオートメーション)装置、産業用プリンター、携帯基地局、半導体など幅広い分野で金属部品を提供している。品質の高さには定評があり、創業時より磨き続けた確かな技術により±5〜15ミクロンの加工精度を実現する。髪の毛が50〜100ミクロンと聞けばその凄さが伝わるだろう。これはベトナム企業にはまだ届かない領域で、日本の技術が活きている。
高精度加工を支える要因の1つとして、尾関氏は、社員の多くを占めるベトナム人女性の優秀さを挙げる。器用で、目が良く、向上心が高い。生産工程では顕微鏡で10〜40倍の倍率という厳密な外観検査があり、その実現には彼女たちのスキルが欠かせない。
品質と顧客対応に自信
「品質保証はどこにも負けない自信があります」と尾関氏は胸を張る。事実、4年間取引がつづく顧客からのクレームは1件のみ。2019年は全取引先において不良品ゼロを達成した。徹底したPDCAサイクルにより、社員200人の一人ひとりが「絶対に不良流出をさせない」と高い意識を持ち、高品質な製品を生み出している。
顧客対応も迅速かつ的備な対応を心掛けており、それらは「3」の数字に象徴される。まず、見積りにおける3日ルール。顧客が安心して任せられる存在でありたいと、見積り依頼には3日以内に対応する。次に、三現主義の徹底。クレームには現場、現物、現実の “3つの現” を踏まえて地に足のついた対応を心掛ける。そして、そのふたつを支える基盤が、24時間リアルタイム品質管理だ。工場は常時稼働し、顧客のニーズに対して全力で応える。
そうした体制を支える社員たちには、ノー残業デーや、いつもより賛沢な社食を提供するハッピーデーなど、快適に働ける環境を提供している。清掃に関しても、独自のやり方がある。ベトナムでは企業が清掃員を雇うのが一般的で、日系企業もそうしているところは多いが、EDVNでは社員自身が帰除を行っている。
「日本らしいやり方なので、ベトナム人社員には理解しづらいかもしれませんが、稼働開始からずっと続けているこだわりです」
自分たちの職場は自分たちの手で清潔に-。そんな姿勢が、高精度のものづくりにつながっているのだろう。
日越の架け橋となり未来を紡ぐ
遠藤製作所は「ベトナムで良いモノをつくること」だけに留まらず、山形本社では企業単独型(監理団体などを通さない受け入れ方式)で、技術向上と生活の安定を目的として技能実習生の受け入れを実施している。べトナムの拠点であるEDVNが、ベトナムと日本の技術の懸け橋となっているのだ。EDVNの技術者が日本でさらに技術を磨き、母国の未来をものづくりで支える。日本で約60年に渡り培われた技術は、ベトナムの地でもまた長い歴史を紡ぐことになるだろう。
EDVNは設立以来、山形工場の「量産対応」と「多品種対応」に続く「低コスト対応」という役割で三位一体の一角を担ってきた。その間にもベトナムは目覚ましい経済発展を遂げ、伸びしろはまだまだ大きい。今後の展望について尾関氏は次のように語る。
「これまでは山形本社の海外工場として、主に日本向けに生産活動をしてきましたが、今後はベトナム国内外の顧客開拓に取り組み、売上拡大を目指し、自社工場設立という夢に向かって突き進んでいきます。これからのEDVNにご期待ください」